鈴木音夢はため息をついた。今日どうやって外出すればいいのか悩んでいたところだった。
「何をため息ついているんだ?」
卓田越彦はいつの間にか、音もなく浴室のドアの前に現れていた。
鈴木音夢はびっくりして、少し怒った。「あなたが悪いのよ、全部あなたのせいで...」
彼女は我慢できずに、彼の胸に小さな拳を振り上げた。
彼女のこの声、この小さな拳は、卓田越彦にとっては痛くもかゆくもなかった。
聞こえるのは、まるで甘えているようで、心が溶けてしまいそうだった。
卓田越彦はすぐに彼女を抱きしめた。「小さな野良猫、朝早くからそんなに欲しいのか?昨夜は満足させてあげられなかったか?」
鈴木音夢は彼の言葉を聞いて、さらに腹が立った。「エロ野郎、それ以外のことを考えられないの?見てよ、首にキスマークがいくつもついちゃってるじゃない。今日あなたと病院に行くのに、人に見られたら、私、生きていけないわ。こんな暑い日にスカーフを巻いたら、病院の医師に精神科に送られちゃうんじゃないの?」
しかも、彼がキスした場所は、一枚のスカーフでは隠しきれないだろう。
卓田越彦も彼女を見たいと思っていた。彼は少し困った様子だった。
しかし、昨夜は確かに激しかったかもしれない。彼女を泣かせてしまったようだ。
「いいよ、怒らないで。こんな暑い日だから、今回はおとなしく家にいなさい。私一人で行けばいい。」
鈴木音夢は彼を見上げた。「おじさま、行かなくてもいいの?まあいいわ、後で棚を探して、ハイネックの服があるか見てみるわ。それにスカーフを巻けば、見えなくなるはずよ。」
鈴木音夢は少し不安だった。彼はいつも細かいところまでうるさいから、一緒に行った方がいいかもしれない。
「昨夜は大変だったな、今日は家でゆっくり休んでいてくれ。安心して、今回は検査だけだから、そう時間はかからないはずだ。」
「そう、じゃあ行かないわ。家であなたを待ってるね。人に見られたら、恥ずかしいし。」
もし一つのマークだけなら、蚊に刺されたと説明できるけど、何箇所もあるのよ、どう説明すればいいの?
鈴木家では、立林絹子が卓田越彦が病院に行くという情報を入手していた。
鈴木玉子はすぐに休暇を取った。もし卓田越彦が本当に不能だったら、彼女も諦めるしかない。