立林絹子も頷いた。卓田越彦が人混みの中に立っていると、あまりにも目立ちすぎる。
こんな傑出した男性が彼女の婿になれば、今後あの名流サークルに行っても、誰もが敬意を払うだろう。
「彼の目の失明は本当のようね。卓田家の人を驚かせないで、静かに様子を見ましょう」
今や鈴木国彦のビジネスは、卓田家の庇護のおかげで順調に進んでいる。
彼は今ではあの姉弟をあやすように接している。そのためにこそ、前回あの小娘を簡単に許したのだ。
立林絹子も鈴木国彦が怒るのを恐れていた。卓田家は敵に回せない。彼女はまず状況を把握する必要があった。
卓田越彦は誰にも支えてもらわず、林執事の案内で、龍頭の杖をついてゆっくりと病院に入った。
潔癖症の人間にとって、誰もが彼を支える資格があるわけではない。