卓田正修はうなずいた。「息子、安心して。玉子は外で待っているから、頑張れ」
「うん!」あまりに感傷的な言葉は、卓田越彦も口にできなかった。
卓田正修は息子が医師に押されて、中の専用手術室に運ばれていくのを見ていた。
10分後、壁の赤いランプが点灯した。
「お父さん、お兄ちゃんの手術が始まったわ」
「ああ、外で待とう」卓田正修も心の中で静かに祈った。
卓田礼奈は振り返り、ずっと傍に立っていた鈴木玉子を見た。「鈴木さん、心配しないで。お兄ちゃんは最高だから、きっと大丈夫よ」
鈴木玉子はうなずいた。「ありがとう、礼奈ちゃん。一緒にお兄さんのために祈りましょう」
鈴木玉子はずっとあまり話さなかった。一つには緊張していたこと、もう一つは何か間違ったことを言うのが怖かったからだ。
幸い、卓田家の人々は皆、卓田越彦の手術に注目していて、彼女にはあまり気を払っていなかった。
卓田礼奈は突然目を輝かせた。「鈴木さん、あなたの首のネックレス、お兄ちゃんからもらったの?」
鈴木玉子は厚かましくもうなずいた。卓田礼奈は唇を引き締めた。「お兄ちゃんは本当にあなたのことが好きなのね。このネックレスは、彼が自分でデザインしたものよ。上のエメラルドは南アフリカから高額で落札してきたもの。当時私もすごく欲しかったけど、お兄ちゃんは私にはくれなかったわ」
鈴木玉子は思わず首のネックレスに触れた。このネックレスは卓田越彦が自らデザインしたものだったのだ。
彼女の口元が少し上がった。鈴木音夢さえ消えれば、彼女は卓田家若奥様の座を安泰にし、欲しいものは何でも手に入れることができる。
手術は朝の10時半から始まり、午後2時過ぎまで続いた。
壁の赤いランプはまだ点灯したままだった。
全員の心が宙に浮いていた。
午後3時になってようやく、壁の赤いランプが消えた。
医師が手術室から出てくると、卓田正修は一歩前に進み出た。「息子はどうですか?危険はありませんか?」
「卓田さん、手術は成功しましたが、現在患者はまだ意識が戻っていないので、後遺症が出るかどうかはまだ確定できません。具体的な状況は、患者が目覚めた後に詳細な検査をする必要があります」
手術が成功したと聞いて、みんなはようやく少し安心した。
「先生、息子はいつ頃目覚めるでしょうか?」