立林絹子はその針の箱を握りしめ、悪意に満ちていた。
かつて鈴木国彦が林暁美と結婚するために彼女と別れた時の恨みが、すべて鈴木音夢に向けられていた。
彼女が鍵を開けると、鈴木音夢は中にいなかった。壁の換気扇が取り外され、穴だけが残っているのが見えた。
立林絹子は一瞬呆然とした後、悲鳴を上げた。あの小娘が逃げたのだ。
彼女は急いで部屋に駆け込み、ベッドで寝ていた鈴木国彦を揺り起こした。「あなた、早く起きて、あの小娘が逃げたわ」
鈴木国彦は鈴木音夢が逃げたと聞いて、眠気が一気に吹き飛んだ。「何だって?鍵をかけていたんじゃないのか?どうやって逃げられたんだ?」
「今見てきたけど、鍵は無事だったわ。彼女は換気扇を外して、そこから這い出たのよ。あなた、早く何とかして。もし彼女が病院に行って、卓田家の人に会ったら、私たちはおしまいよ」