第103章 逃走6

鈴木玉子は卓田越彦のすべての指標が良好だと聞いて、緊張しながらも期待に胸を膨らませた。「卓田おじさん、本当ですか？それは素晴らしいわ、越彦さんの目はすぐに見えるようになるんですね。」

「これもお前の功績だよ、この間の越彦の世話、ご苦労様。」

息子が健康になれるのは、鈴木玉子の功績が大きい。彼女は息子に幸運をもたらす八字を持っているのだ。

元々彼は迷信を信じていなかったが、今となっては、本当に信じるようになった。

「卓田おじさん、これは私がすべきことです。休憩室で少し休んでください。私がここでしっかり見ていますから。」

「そうだな、じゃあ少し休ませてもらうよ。」

この娘がいれば、卓田正修も安心だった。

あの厄介な息子は事故に遭ってから、看護師を何人も追い出してきた。毎日のように人を殴っていた。

鈴木家の娘は、彼のそばにいて世話をすることができる唯一の人物だった。

ここ数年、時々女優たちと噂になることはあったが。

しかし父親として、卓田正修はよく知っていた。息子はそういった女性たちに全く手を出さないということを。

外部の人はもちろん、家の中でさえ、彼が我慢できる唯一の人物は礼奈だけだった。しかし礼奈が彼に触れようとしても、振り払われてしまうのだ。

彼の潔癖症は、卓田家が後継ぎなしで終わるのではないかと思わせるほどだった。

卓田正修が去った後、鈴木玉子はようやく堂々と卓田越彦を見つめることができた。

端正な容貌、数千億の資産、こんな男性は絶滅危惧種の恐竜のようなものだ。

彼女は口元を少し上げ、思わず心が躍った。卓田家若奥様の座はすぐに彼女のものになる。

林柳美は朝食を持って病院に来た。入ってきたとき、鈴木玉子が卓田越彦に向かって微笑んでいるのを見た。

その笑みは、林柳美を少し不安にさせた。まるで肉のかたまりを見つめているかのようだった。

鈴木玉子は物音を聞いて、急いで笑みを隠した。

振り向くと、林柳美が入ってきたのを見た。「柳田おばさん、おはようございます。卓田おじさんを休憩室に行かせました。」

林柳美は鈴木玉子の疲れた顔を見て、彼女が本当に心配しているように見えた。先ほど見たものは目の錯覚だったのかもしれないと疑った。

「玉子、朝ご飯は食べた？あなたもあまり無理しないでね。」