もし彼女がその中の一人がトイレに行った隙に、混乱に乗じて空港から逃げ出していなかったら、今頃は命が危なかっただろう。
鈴木音夢は確信していた、立林絹子は本当に彼女の命を奪うつもりだったのだと。
あの二人は、彼女が国外に着いてから手を下すつもりだった。
立林絹子は確かに二百万を使って、国外で鈴木音夢を始末するよう手配していた。
彼女が死んでしまえば、鈴木玉子と卓田越彦の関係に影響を与えることはなくなる。
そして、立林絹子の林暁美への憎しみは、すべて鈴木音夢に向けられていた。
彼女に対して、立林絹子は絶対に手加減しないだろう。
ただ、鈴木音夢が空港から逃げ出した後、あの二人はすぐに気づき、彼女を執拗に追いかけてきた。
異国の地で、一銭も持たず、パスポートも奪われた。
鈴木音夢の心は絶望に包まれたが、卓田越彦のことを思うと、諦めきれなかった。