五年後
古田静雄は白いカジュアルウェアを着て、鈴木音夢の小さな部屋に入った。
ドアを開けるとすぐに、チビちゃんが飛びついてきた。「古田おじさん……」
古田静雄は彼女をひょいと抱き上げた。チビちゃんはだいぶ痩せていた。
でも大きな目をしていて、見ているとキスしたくなるような衝動に駆られた。
鈴木音夢は荷物をまとめていたが、古田静雄が来たのを見て、手を止め、彼にお茶を注いだ。
「音夢、あなたと杏子のパスポートと航空券の手続きは済んだよ。明後日の便で帰国する予定だ」
そう言って、古田静雄は片手でチビちゃんを抱きながら、もう一方の手でポケットから彼女たちのパスポートと航空券を取り出した。
鈴木音夢はそれを受け取り、思わず興奮した。杏子の状態はますます悪くなっていた。
海外での適合率は低く、もう引き延ばすことはできない、帰国しなければならなかった。