第178章 彼女は彼の肋骨5

鈴木音夢はちょうど断ろうとしていた。やはり外なので、こんなことをするのはあまり良くない。

しかし、彼女が言葉を発する前に、卓田越彦はすでに彼女を抱き上げていた。

彼の高くて立派な体格で、鈴木音夢を抱えるのは、まるで小さな鶏をつかむようで、全く苦労していなかった。

それに、このチビを抱くと、以前より軽くなっていた。この5年間でどれだけ苦労したかが分かる。

鈴木音夢は彼が横暴だと知っていた。この男は、彼が決めたことに対して、あなたは彼に従うしかなく、反論の余地はない。

彼女は顔を彼の胸に埋め、他の人を見る勇気がなかった。

背が高くてハンサムな、スーツを着たイケメンが女性を抱えてホテルから出てきたとき、皆が驚いた。

ホテルの前のスタッフは、羨ましそうな顔で「こんなにハンサムな男性に抱かれるなら、死んでも本望だわ」と言った。

「そうよね、そうよね、すごくカッコいい、あの雰囲気、まるで王子様みたい」

鈴木音夢は他の人がそう言うのを聞いて、顔がさらに赤くなり、彼の腕の中で動かなかった。

卓田越彦のような傲慢な男は、いつも他人の顔色を伺わずに行動する。

彼はそのように堂々と、鈴木音夢を抱えて、あのハマーに向かって歩いていった。

この時、空はすでに徐々に暗くなっていた。

太陽はすでに沈み、空の端には大きな赤い夕焼けが残り、とても鮮やかだった。

約20分ほどで、ようやく病院に到着した。

鈴木音夢と卓田越彦は急いで入院部に向かい、看護師は鈴木音夢が戻ってきたのを見て、ようやく安心した。

「鈴木さん、やっと戻ってきましたね。杏子ちゃんはずっとあなたがいつ戻ってくるのか聞いていました」

「古川おばさん、ありがとう。もう帰っていいですよ」

「では、私は先に失礼します」

鈴木音夢はベッドに近づき、卓田越彦の手を引いて、「杏子、今回はパパが本当に来たよ」

卓田越彦はベッドの上で、痩せこけた娘を見て、心が痛んでたまらなかった。

「杏子、ごめんね、パパは遅れてしまった」

ベッドの上の小さな子は、じっと卓田越彦を見つめていた。パパは本当にイケメンだ、叔父さんよりもカッコいい。

「パパ、あなた...やっと来てくれた、私...私とママはあなたに...会いたかった...」

杏子が一言言い終えると、突然呼吸が急になり、顔色が赤くなり、とても悪そうだった。