第207章 怖がらないで、叔父さんがいるから13

鈴木音夢は慌てて川原秘書の顔を見ることができず、しかもこの男性は彼女の腰をしっかりと抱き締め、彼女を起き上がらせる気配はまったくなかった。

「うん、わかった」

「社長、では私は先に失礼します」

川原欣枝は眼鏡を直し、これ以上大きな電球役を演じたくなかった。

社長は女性に近づかないと言われていたが、それは間違いではなかった。長年の間、社長がこのように女性を抱きしめるのを見たのは初めてだった。

川原欣枝が出て行くとすぐに、鈴木音夢は不満を漏らした。

「おじさま、こんなことをしてはダメです。これ...これを人に見られたら、噂になりますよ。会社でのイメージに影響しないか心配じゃないんですか?」

「チビ、君は恥ずかしいのか、それともおじさまを心配しているのか?安心して、川原秘書は余計なことを言わないよ」

卓田越彦がそう言うのを聞いて、鈴木音夢はようやく安心した。

「さあ、行こう。食事に連れて行くよ」

今夜、彼は彼女のために小さなサプライズを用意していた。これが彼らの最初の正式なデートだった。

結局のところ、ツンデレな卓田坊ちゃまも、初めて恋をしていたのだ。

鈴木音夢は彼が食事に行くと言うのを聞いて、特に深く考えず、彼についていった。

ただ、オフィスを出ると、多くの視線が彼女に向けられていることに気づいた。

約20分後、車はあるフランス料理店の前に停まった。

鈴木音夢は店内の豪華な装飾を見て、今日はフォーマルなドレスを選んでいたことを心から感謝した。

そうでなければ、普段なら彼女はシャツとジーンズを着ていただろう。それで卓田越彦に恥をかかせることになっていたかもしれない。

卓田越彦は車のキーをドアボーイに投げ、チビの様子を見て、「こういうレストランで食事したことないの?」と尋ねた。

鈴木音夢はうなずいた。以前は、彼女と世介は生活費にも困っていた。

その後留学してからは、さらに厳しい生活を送っていた。どうしてこんな高級レストランで食事ができただろうか?

「大丈夫、緊張しなくていい。私たちは食事をしに来たんだから」

卓田越彦は彼女の手を握り、とても雰囲気の良いフランス料理店に入った。

レストランに入ると、鈴木音夢は周りに誰もいないことに気づいた。