軟膏が指につけられた時、鈴木音夢はやはり思わず身をすくめた。十指連心、あんなに踏みつけられたのだから、当然痛いはずだ。
卓田越彦の顔はさらに険しくなり、あの記者たちを全員叩き切ってやりたかった。
最も憎らしいのは諌山雪乃だ。祖母のことを考えなければ、前回彼をホテルに連れ込んだ件を、簡単に許すはずがない。
今回は、絶対に簡単には許さない。
なぜなら、彼女が傷つけたのは、彼が最も大切にしているチビだからだ。
やっと軟膏を塗り終えると、卓田越彦は別の瓶を取り出し、彼女の太ももの傷に塗った。
実際、指以外は本当に痛いというほどではなく、小さな傷だった。
しかし、卓田越彦のこんなに心配そうな表情を見ると、彼女の心はとても温かくなった。
「よし、ゆっくり休んで、ついでに弟に電話を返しておいで。彼は心配しているよ」