諌山雪乃も馬場嘉哉のその一発の銃に驚いて固まり、悲鳴を上げることも忘れて、そのまま車に引きずり込まれた。
諌山お父さんは雪乃が一体何をしたのか、卓田越彦をこれほど怒らせるようなことを知らなかった。
これで、雪乃が連れ去られ、これからどんなことが起こるのかもわからない。
「急いで、奥様を先に二階へお連れしなさい」
今は、誰が雪乃を、諌山家を救えるのかもわからない。
諌山お父さんはあれこれ考えた末、突然はっとした。もしかして、世間を騒がせている例の流出写真事件は、彼女のしわざなのか?
もしそれが本当なら、もう彼女を守る方法はないだろう。
諌山雪乃は車が卓田家に入っていくのを見て、彼らは一体何をするつもりなのかと思った。
車が裏山に向かうと、雪乃は少し困惑した。彼女は卓田家に何度も来たことがあるが、裏山に何か特別なものがあるとは知らなかった。
卓田越彦の側にいる人間は、みな彼の腹心だった。
馬場嘉哉はちょっと目配せをして、雪乃を地下室に引きずり込んだ。
雪乃は広い地下室を見て、そこには暗い川まであることに驚いた。その中のワニが時々水面に浮かび上がり、大きな血のような口を開けていた。
「ねえ、一体私をどこに連れて行くの?越彦さんはどこ?」
馬場嘉哉は檻を開け、雪乃をその中に放り込んだ。
檻の隣には、一頭のライオンが飼われていた。
そのライオンは彼女を見ると、とても興奮しているようだった。
雪乃は恐怖で死にそうになり、隅に縮こまって、立ち上がる力さえなかった。
「馬場嘉哉、出して、出して!おばさまが知ったら、絶対に許さないわよ!」
馬場嘉哉は耳を貸さず、部下たちを連れて地下室を出て行った。
地下室のドアが閉まると、地下室はさらに静かになった。
薄暗い灯りの中、彼女を虎視眈々と見つめるライオンと、時々顔を出すワニたちを見て。
雪乃は恐怖で全身が震えた。ここで初めて、卓田越彦がどれほど恐ろしい男なのかを本当に理解した。
もしかして彼は、あの写真が彼女が流出させたものだと突き止めたのだろうか?
もし彼があの写真を見たなら、むしろ鈴木音夢というあの厚かましい女を、向こうのライオンに投げ込むべきではないのか?
その時、卓田家の本館では、卓田越彦が鈴木音夢の手を握り、彼女の寝顔を見つめていた。