谷口英樹は杏子を直接トイレに連れて行き、彼女の手についたお菓子のかすを全て洗い流した。
彼のこの様子を見て、卓田正修はとても緊張した。
「口谷さん、うちの杏子に何かあったのか?」
卓田正修は近づいて、愛する孫娘を心配そうに見つめ、彼女の新しい腎臓に何か問題があるのではないかと心配した。
「心配しないで、私はただこのアザがとても特別だと思っただけだ。」
そう言って、谷口英樹はタオルで彼女の手を拭き、引き出しから虫眼鏡を取り出した。
卓田正修も注意深く見ていた。少し力を入れて押すと、そのアザの模様がはっきりと現れ、よく見ると花のような形をしていた。
谷口英樹は虫眼鏡で見ると、さらに鮮明になり、眉をひそめた。「杏子の手のひらのこのアザは、北海道霊族の紋章を思い出させるな。」
卓田正修は虫眼鏡を手に取って自分で見た。虫眼鏡の下では、確かに単なるアザではなく、紋章のように見えた。
「口谷さん、北海道霊族って何だ?それがうちの杏子とどんな関係があるんだ?」
「若い頃、私は北海道に行ったことがある。その時、森の中で部隊とはぐれて重傷を負い、霊族人に救われた。自分が実際に経験していなければ、霊族は伝説だと思っていただろう。」
その経験を思い出し、谷口英樹の頭の中には、まだはっきりとした記憶が残っていた。
「それで?その霊族とはいったい何がそんなに神秘的なんだ?」
「私自身も医師だから、自分の怪我の状態はよく分かっていた。もう助からないと思っていた。霊族の人々は、彼らの独特の医術を使って、なんと一日で私の内部の怪我を完全に治してしまった。彼らの霊族の中には、才能ある継承者がいて、占いの術に長け、陰陽を理解し、さらに彼らの操蠱術は世界一流だと言われている。」
卓田正修と谷口書陽は古くからの知り合いだったが、彼の話を聞いて、卓田正修は不満そうな顔をした。
「そんなこと、今まで一度も聞いたことがないぞ?」
「当時、霊族の族長は私の怪我が良くなった後、私を送り出した。彼らは外部の人間に邪魔されることを望んでいなかった。後に彼らにお礼をしようと戻ろうとしたが、入口をどうしても見つけることができなかった。あの場所は年中霧に包まれていて、入口を見つけるのは容易ではない。おそらく彼らは独自の方法で入口を守っているのだろう。」