第266章 言い争いになったら彼女にキスする10

メイクアップアーティストは頭を下げ、黙って葉山桐子の罵声を聞いていた。

井上菜々は思わず文句を言った。これは警察ドラマであって、レッドカーペットを歩くわけではない。彼女はこんなに派手にしているが、女性警官らしさが全くない。

監督が歩み寄り、葉山桐子に対して、笑顔を作らざるを得なかった。

「お嬢さん、誰があなたを怒らせたの?怒ると美しさが損なわれますよ。」

葉山桐子は自分の顔を見て、「見てよ、これはどんなメイクアップアーティスト?これはなんて酷い服、臭いがひどい。」

監督は内心で目を回した。一流スターのわがままは、今日に始まったことではない。

仕方がない、会社が推し進めようとしている大スターなのだから。

「葉山さん、あなたが今回演じるのは、正義感あふれる女性警官です。保証します、この役は今年のゴールデン・イメージ賞を狙えるでしょう。犯罪者を追う役なので、実はこの姿はとても適しているんです。」