鈴木音夢はあちこちさまよっていたが、午後になってようやく群衆演技の役を見つけた。死体役だった。
死体を演じるのに技術的な難しさはないが、鈴木音夢はこれが自分の労働で得たお金だと思い、人に見せられないようなことではないと感じた。
どうせ、そう遠くない将来、永崎城の人々は皆、彼女がシンデレラのように卓田家のお坊ちゃまに婚約を破棄されたことを知ることになる。
死体役を終えて、鈴木音夢はお金を受け取り、他にスタントの仕事がないか探そうとしていた。
そのとき、大勢の人々が堂々と入ってきた。
鈴木音夢は先頭を歩く美しい女性を見て、思わず足を止めた。
あれは今人気の一線級スター、葉山桐子ではないか?
あの夜、卓田越彦が彼女を呼んだ声は何と親しげだったことか。桐果、と。ふん!
鈴木音夢は心の中で歯ぎしりしながら、葉山桐子を見れば見るほど吐き気を覚えた。
彼女が今、春風のように満面の笑みを浮かべている様子を見ると、きっと卓田越彦のベッドで寝て、彼に重用されているのだろう。
案の定、彼女は新作映画『女警の真髄』の主演女優で、今日はここで開始式を行うために来ていたのだ。
鈴木音夢が心の中で卓田越彦の厚かましさを呪っていると、突然肩を叩かれた。
鈴木音夢が振り向くと、「監督、何かご用ですか?」
「この後、殴られるシーンがあるんだが、君は主演女優とスタイルが似ているから、やってみないか?」
監督は何度も撮影したが、効果が出なかった。
今どきの女優たちは、ますます大物になり、少しでも難しいことがあれば撮影を拒む。
「いいですよ、私は以前にも結構やったことがあります。」
鈴木音夢は断らなかった。スタントとして、彼女はプロだった。
一日が終わり、鈴木音夢は何度もスタントを務め、疲れてバラバラになりそうだった。
家に帰ると、彼女は今日十分に疲れたことに感謝した。
疲れていれば眠りにつきやすく、余計なことを考える余裕もなく、今この瞬間、あの女が卓田越彦の下で横たわっているかどうかも考えずに済む。
そうだ、卓田坊ちゃまは、どんな女性でも手に入れられるのだから。
その時、卓田家では、卓田越彦がようやく娘を寝かしつけたところだった。
ここ数日、チビは彼に連絡してこず、娘はママに会いたいとぐずっていた。彼は娘にどう説明すればいいのか分からなかった。