第264章 言い争いになったら彼女にキスする8

三十分後、卓田坊ちゃまはついに我慢できず、鈴木音夢の番号に電話をかけた。

しかし、電話は鳴り続けるだけで、誰も出なかった。

卓田越彦は、着信音が部屋から聞こえてくるような気がして、思わず中に入った。

着信音はますます明らかになり、卓田越彦は布団の下から彼女の携帯電話を見つけ出した。

彼は思わずこめかみをさすった。なるほど、以前から彼の電話に出なかったのは、そもそも携帯を持ち歩いていなかったからだ。

卓田越彦は深く息を吸い込み、自分が自業自得なのではないかと後悔し始めた。

今夜彼女が来てくれたことは、最高の表現ではなかったか?

それなのに、彼は葉山桐子を車に乗せてしまった。今頃彼女は心の中で自分を憎んでいるに違いない。

アパートでは、鈴木音夢は寝返りを打って眠れないということはなかった。