第287章 豊田家の玉の飾り6

鈴木世介は彼女の返事を待たずに、車から降り、顔を中に入れて言った。「ここで少し待っていてくれ、すぐに戻る」

そう言うと、彼はスーツケースを持って会社に入っていった。

卓田礼奈はこの時、頭がまだ少しぼんやりしていた。鈴木世介は今何と言ったのだろう?

彼は彼女にここで待っていてほしいと言い、夜に夕食に誘ったのだろうか?

彼女は思わず胸に手を当てた。心臓が激しく鼓動していて、口元は自然と上がっていた。

卓田礼奈よ、鈴木世介はあなたが彼の彼女だとは認めていないけれど。

でも、彼は他の女の子が彼の彼女だとも認めたことはない。

まだチャンスはあるわ、頑張って!

元気を取り戻した卓田礼奈は、安心して車の中で待っていた。

約30分後、鈴木世介が会社から出てきた。

彼は小さな箱を手に持って彼女に投げた。「お前へのプレゼントだ。安物だから、気に入らなければ返してくれ」