卓田越彦は頷いた。卓田製薬は主に漢方薬の研究開発を行っており、自社の漢方薬材料栽培基地も持っている。
薬材の収集は比較的容易で、谷口おじさんはこの分野の権威だ。
「谷口さんが数百種類の貴重な薬材を集めていて、しかも年代物だと聞いたよ。お父さんから聞いてない?取り戻したものだから、あなたが飲むのにちょうどいいわ。前に杏子を産んだ時に体を十分に養えなかったから、今は取り戻さないと」
あの時期、彼女は一人で子供を育てていて、きっととても大変だったに違いない。
卓田越彦はその光景を思い浮かべると、胸が痛くなった。
鈴木音夢はまず一口飲んだ。濃厚な薬の香りとお酒の香りが混ざり、飲み込むと体全体が温かくなるのを感じた。
「このグラス一杯を全部飲んで、それから風呂に入れてあげるよ」
卓田越彦は彼女を見つめながら言った。鈴木音夢を食べてしまったばかりの若旦那は、とても機嫌が良かった。
鈴木音夢も動くのが面倒で、彼に抱かれたままバスルームに入り、一緒にお風呂まで入れてもらった。
翌日、卓田越彦は鈴木音夢を連れて会社に行き、彼女を卓田エンターテイメント子会社の副社長として正式に発表した。
もちろん、卓田越彦は彼女を疲れさせるつもりはなく、毎日彼女を連れて出勤するのは悪くない感じだった。
数日前の撮影現場にいた人たちは、スタントが一転して会社の副社長になったのを見て、不安を感じずにはいられなかった。
監督はさらに笑顔で慎重に接し、あの日若奥様に何度もジャンプさせたことを後悔し、恨みを買わないか心配していた。
エンターテイメント会社の事を鈴木音夢に任せた卓田越彦は、自分は会議に出かけた。
これで監督とプロデューサーは緊張し、若奥様が二人を個別に呼び出したのは、人を入れ替えるつもりなのではないかと心配した。
鈴木音夢は初めて自分のオフィスを持ち、大きな椅子に座って、卓田越彦が出かける前に言った言葉を思い出した。
彼は、彼女が何をしても全力でサポートすると言っていた。
「田中監督、そんなに緊張しなくていいわ。ただ女優の主役は決まったのかと聞きたかっただけよ。それと、私が直接女三号を演じることになるわ」
監督とプロデューサーは思わず顔を見合わせ、慎重に尋ねた。「鈴木社長、あなたが...直接女三号を演じるとおっしゃったのですか?」