第327章 愛情、言葉にしなければ12

卓田礼奈は口元を少し上げ、急いで彼の後を追った。「鈴木世介、なぜ私に花をくれるの？私はあなたの彼女じゃないのに」

鈴木世介は本当に気まずそうだった。彼はただ言い出せなかっただけだ。

彼は昨夜彼女にキスをして、今日花を贈ったことで、その意味は十分明らかだと思っていた。

しかし、卓田礼奈がそんな質問をするとは思わず、鈴木世介は突然足を止めた。

卓田礼奈は彼が急に立ち止まるとは思わず、彼の体にぶつかってしまった。

彼女は鼻をさすりながら、無邪気な表情で彼を見上げた。「あなた...どうして急に止まったの？」

鈴木世介は眉をひそめた。「ぶつかって痛くなかった？」

卓田礼奈は首を振り、彼をじっと見つめ続けた。

鈴木世介は軽く咳をし、卓田礼奈のまなざしに見つめられ、ますます気まずそうな表情になった。

「バカだな、行こう」

卓田礼奈は思わず笑ってしまった。鈴木世介のこのバカ、彼女のことを好きだと一言言うのがそんなに難しいことなのか？

でも、彼はこういう人なのだ。卓田礼奈も彼を無理に言わせようとはしなかった。彼女の心の中で分かっていればそれでよかった。

この時間は、ちょうど通勤・通学のラッシュ時だった。

学校の外のバス停には人があふれていた。

鈴木世介はその人の波を見て、そして隣に花のように美しい少女を見た。

彼は淡々と言った。「一生懸命お金を稼いで、早く車を買うよ。これからはもうバスに乗せたりしない」

卓田礼奈は彼の言葉を聞いて、心の中に蜜が流れ込んだように甘く感じた。

甘い言葉よりも、鈴木世介のこの一言が、彼女の心をもっと甘くした。

彼女は思わず彼の側に寄り添い、静かに言った。「鈴木世介、あなたに疲れてほしくないの。車は後でゆっくりお金を貯めて買えばいいわ。あなたと一緒にバスに乗るのも、私は嬉しいわ」

鈴木世介は彼女の手を握り、うんと言って、頷いた。

しかし心の中では、やはり早く車を買った方がいいと思っていた。

そうすれば、彼女は大勢の人と一緒に、彼と共にバスの中で押し合いへし合いする必要がなくなる。

バスが来た。鈴木世介は彼女の手を引いて乗り込んだ。卓田礼奈は誰かに花を傷つけられないように、ずっと大事に守っていた。

バスの中はそれほど混んでいなかった。鈴木世介は彼女を引っ張って奥の隅に立った。