第326章 愛情、言葉にしなければ11

女性は頷き、涙と唾液が滴り落ち、とても惨めな様子で「ボス、必ずそれを見つけます。お願いです、解毒剤をください」と言った。

男は汚いものでも見るかのように彼女を蹴り飛ばし、小瓶を投げ渡すと、大股で立ち去った。

女性は震える手で瓶を開け、中の薬を一気に飲み込んだ。

しばらくして、女性はようやく正気を取り戻した。

彼女は浴室に入り、鏡の中の自分を見つめた。それはまるで幽霊のように、とても見知らぬ姿だった。

翌日、卓田家は平穏を取り戻し、家のセキュリティシステムが再度アップグレードされた。

卓田礼奈はここ数日の憔悴した状態から一変し、まるで春風に包まれたように生き生きとしていた。

今日、杏子は病院で検査を受ける必要があり、卓田越彦と鈴木音夢は会社に行かず、自ら杏子を病院に連れて行った。

病院に着くと、小さなお姫様は緊張し始め、ずっと鈴木音夢の手を握りしめていた。

彼女は行きたくないと言いたかったが、行かなければならないことも分かっていた。

鈴木音夢は彼女をよく理解していて、優しく彼女の手の甲を撫でながら「杏子、大丈夫よ。ただの検査だから、注射はないわ」と言った。

卓田越彦は娘の緊張した様子を見て、彼女を抱き上げ「杏子、怖がらなくていいよ。パパとママがついているから」と言った。

杏子は頷いた。彼女は病院に来る回数が多く、病院に対してトラウマがあった。

卓田風太が自ら彼女を検査室に連れて行き、叔父さんが付き添っていたので、杏子は少し落ち着いた。

検査が終わり、血液検査もする必要があった。

杏子は採血をすることを知り、泣かないように我慢した。

彼女のその姿を見て、鈴木音夢と卓田越彦は胸が痛んだ。

病院を出たときには既に昼だった。外で作られた食事は、どれも家で作られたものほど美味しくなかった。

家のすべての食材は最高級のもので、一部は峠山別荘から送られてきたものだった。

杏子は午前中ずっと疲れていて、食欲がなく、昼食を少し食べただけで、二階に上がって昼寝をした。

鈴木音夢は家に残って彼女に付き添い、卓田越彦は会社に戻った。

杏子はすぐに眠りについた。この頃、丁寧に養生していたので、以前よりも顔色はずっと良くなっていた。

ただ、彼女はまだ痩せていて、標準からはほど遠かった。