第325章 愛情、言葉にしなければ10

古田静美は眉をひそめた。当時、彼女は鈴木世介が裏庭に行ったまま長い間戻ってこないのを見ていた。

そして彼女も我慢できずに裏庭へ行った結果、彼女は...彼女は鈴木世介が卓田礼奈にキスしているところを目撃した。

その光景を見て、古田静美は自分の心が粉々に砕けるのを感じた。

鈴木世介は卓田礼奈を好きなのだ。彼女には鈴木世介が卓田礼奈に告白するのを聞く勇気がなかった。

そこで、彼女は静かに立ち去ろうとした。

すると一つの人影が見えた。その人は黒い服を全身に纏い、目だけを露出させていた。

しかしその目は、古田静美には何とも言えない親しみを感じさせるものだった。

だがその親しみがどこから来るのか、彼女にも説明できなかった。

「お兄ちゃん...黒い忍者服を着た人を見たわ。たぶん女の人だと思う」

古田静美は頭の中で必死に思い出そうとしたが、記憶はますます曖昧になっていくように感じた。

「どうしてそれが女だと確信できるんだ？」

古田静雄は重要な点を捉えた。あの人影はすぐに消えてしまい、監視カメラからでも男女の判別はできなかった。

「あの人の目を見たの。体つきから見て、女性だと思う」

古田静美は首の後ろをさすった。首はまだ痛みを感じていた。

鈴木世介がすでに卓田礼奈と一緒になることを決めたと思うと、彼女はとても辛くなり、もうここにいたくなかった。

「お兄ちゃん、家に帰りたい」

「ああ、送るよ」

古田静雄は彼女をベッドから起き上がらせ、鈴木音夢は古田家の兄妹を車まで見送り、彼らが去っていくのを見送った。

四階は既に点検済みで、何も盗まれていなかった。

明らかに、この侵入者はお金のために来たのではなかった。

しかしお金のためでないなら、一体何のために来たのだろうか？

卓田正修はこめかみをさすりながら言った。「越彦、人を派遣して水道管を修理させろ。この期間は警備を強化しろ。奴らは欲しいものを手に入れられなかったから、また来るかもしれない」

卓田越彦は眉をひそめた。卓田家のような百年の歴史を持つ名家は、敵も少なくないのだ。

二階では、鈴木音夢が杏子をお風呂に入れた後、寝かしつけていた。

部屋に戻ると、すでに11時を過ぎていた。卓田越彦は書斎で電話をしていた。

彼女が入っていくと、卓田越彦は電話を切った。