第331章 愛情、言葉にしなければ16

卓田礼奈の顔は、やはり赤くなってしまった。「私...一人で寝るのが怖いの。」

しかも彼女は初めてこのアパートで寝るのに、電気もないなんて、怖くて死んでしまいそうだった。

鈴木世介は軽く咳払いをして、意地悪そうに彼女に言った。「卓田礼奈、俺は男だぞ、わかってる？怖くないのか？」

卓田礼奈は顔を上げて彼を見つめ、首を振った。「あなたなら怖くないわ。私を傷つけたりしないって知ってるから。」

結局彼女に負けてしまった。こんな時間だし、彼女を家に送り返すわけにもいかない。

「バカだな、わかったよ。じゃあ、入って寝ろ。」

このバカ、彼が何もしないと確信してるのか？彼をそんなに信頼してるのか？

卓田礼奈は彼の後ろにぴったりとついていった。鈴木世介のベッドはそれほど大きくないが、二人で寝るには十分すぎるほどだった。

鈴木世介は布団を真ん中に置いて、まるで国境線を引いたかのようだった。

卓田礼奈は少し理解できず、枕に頭を乗せながら尋ねた。「どうして布団を真ん中に置くの？」

彼女は本当に頭が悪いのか？こんなことまで聞くなんて。

鈴木世介は横になり、思わず体を向けて彼女の鼻をつまんだ。「バカだな。お前は俺を信じてるかもしれないが、俺は自分をあまり信じてないんだ。俺を柳下惠だと思ってるのか？」

卓田礼奈はようやく理解し、思わず笑った。さすが彼女がこんなに長く好きだった人だ。

「鈴木世介、あなたって本当に優しいね...」

「バカだな、さあ寝ろ。」

鈴木世介はそれ以上何も言わなかったが、卓田礼奈の手が伸びてきて、彼の手を握った。

鈴木世介は大きな手で彼女の手を包み、指を絡ませた。

二人とも何も言わなかったが、こんな夜は本当に素敵だと感じていた。

夜の闇の中、卓田礼奈はその大きな手をしっかりと握り、とても安心して、すぐに眠りについた。

鈴木世介はなかなか眠れず、じっくりと考え事をしていた。彼自身もいつ眠りについたのかわからなかった。

翌朝、柔らかな陽の光が窓から差し込んでいた。

もともと二人の間に置かれていた布団は、いつの間にか床に蹴落とされていた。

卓田礼奈は彼の腕を枕にして、まるで猫のように彼の側にくっついていた。

鈴木世介は時間を確認した。彼の作る朝食はあまり美味しくない。