第345章 一目であなたを見分けられる14

井上菜々は少し悔しく思い、やはり寝に戻ることにした。

もしリンダが林浅香なら、時間が経てばいつか分かるだろう。

以前、彼女はお兄さんとあれほど愛し合っていたのに、どうして彼のことを忘れてしまったのだろう?

お兄さんはあんなに良い人なのに、なぜ彼女は彼を望まないのだろう?

翌朝、鈴木音夢が目を覚ますと、ちょうど太陽が東からゆっくりと昇るところだった。

予定通りなら、今日もう一日撮影して、夜には家に帰って食事ができるはずだ。

しかし、今日の進行はそれほど順調ではなく、午後になると天気はますます蒸し暑くなった。

みんなまるで蒸し器の中で蒸されているようで、鈴木音夢は一つのシーンが終わると、服が水の中から引き上げられたようにびしょ濡れになっていた。

午後4時過ぎ、あまりの暑さに監督も耐えられず、すでに熱中症になった人もいた。

残りの2シーンは、明日に撮影することになった。

夕方6時頃、空が暗くなり、大きな雲が積み重なって黒々と広がり、大雨が降りそうな様子だった。

監督は心配になった。この状況で夜に大雨が降れば、山の中では安全上の問題がある。

しかし今の状況では、すぐに雨が降り出すだろうし、無謀に山を下りるのも危険だ。

竜川と岩山も同様に心配していた。山での撮影場所はかなり辺鄙で、家も安全そうには見えなかった。

竜川は急いで卓田越彦に電話をかけ、状況を報告した。

電話が終わるとすぐに、外でザーッという音がして、大粒の雨が空から降り始めた。

卓田越彦は非常に心配していた。この時点では、ヘリコプターでさえ視界不良で、山岳地帯から人々を救出するのは難しいだろう。

「竜川、若奥様をしっかり守れ。雨が弱まったら、迎えの者を送る」

くそっ、卓田越彦は考えれば考えるほど不安になり、胸に不吉な予感が広がった。

彼は鈴木音夢に電話をかけた。音夢と井上菜々は家の中に避難していた。

外ではすでに大雨が降り始め、すべての物は室内に収納されていた。

しかし、屋根からときどき滴り落ちる水滴を見ていると、このような大雨が続けば、今夜眠ることさえ問題になるだろう。

「もしもし、おじさま...」

「チビ、山で大雨が降っているから、どこにも行くな。後で雨が少し弱まったら、ヘリコプターで直接迎えに行かせる。勝手に動き回るなよ、わかったか?」