前方で崩落が起きたと聞いて、皆は緊張し始め、急いで家から飛び出した。
竜川は振り返り、大股で家の中に駆け込んだ。「若奥様、すぐに山を下りましょう。前方で崩落が発生し、これだけの雨が降っていると、土石流が発生する可能性が非常に高いです。」
鈴木音夢と井上菜々はそれを聞くと、何も持たずに急いで家から出て逃げ出した。
監督はもはや機材のことを気にする余裕もなく、以前撮影していたテープだけを持って出た。
皆は車に乗り込み、慎重に山道を下り始めた。
本来なら雨の日に冒険するつもりはなかったが、今はその場に留まる方がより危険だった。
もしかしたらすぐに土石流が発生し、彼らが生き埋めになる可能性もあった。
車内で、鈴木音夢は外の状況を見ながら、思わず手のひらに冷や汗をかいていた。
井上菜々も怖がって、鈴木音夢の側にぴったりと寄り添った。「鈴木社長、私たち...大丈夫でしょうか?」
「大丈夫よ、絶対に山を下りられるわ。」
鈴木音夢は口ではそう言ったものの、同じように心配していた。
卓田越彦と杏子はまだ家で自分の帰りを待っている。この幸せな日々はまだ始まったばかりで、彼らと離れたくなかった。
鈴木音夢の車のすぐ後ろには、リンダとそのマネージャーの車が続いていた。
夏目夏菜は外の状況を見ながら、眉間にしわを寄せていた。
一方リンダは、顔に緊張の色を全く見せず、静かに窓の外の激しい雨風を眺めていた。
雨はますます激しくなり、さらに強くなる様子だった。
山道では、黄色い泥を含んだ水の流れがどんどん大きくなり、道路全体が川のようになっていた。
誰も予想していなかったが、山に入った後、突然の豪雨に見舞われた。
しかも夜だったため視界が悪く、車のスピードを上げることができず、ゆっくりと山を下るしかなかった。
しかし、車は30分走っても、ほんのわずかしか進んでいなかった。
この豪雨がまだ止まないなら、何が起こるか本当に分からなかった。
卓田家では、卓田越彦が外の雨の様子を見ながら、鈴木音夢と竜川たちの携帯電話が全く繋がらないことに、
まるで熱い鍋の上の蟻のように、落ち着かない様子だった。
だめだ、もう待てない。
卓田越彦は大股で部屋を出た。卓田正修は彼の様子を見て、音夢を心配していることを理解した。