第346章 一目であなたを見分けられる15

前方で崩落が起きたと聞いて、皆は緊張し始め、急いで家から飛び出した。

竜川は振り返り、大股で家の中に駆け込んだ。「若奥様、すぐに山を下りましょう。前方で崩落が発生し、これだけの雨が降っていると、土石流が発生する可能性が非常に高いです。」

鈴木音夢と井上菜々はそれを聞くと、何も持たずに急いで家から出て逃げ出した。

監督はもはや機材のことを気にする余裕もなく、以前撮影していたテープだけを持って出た。

皆は車に乗り込み、慎重に山道を下り始めた。

本来なら雨の日に冒険するつもりはなかったが、今はその場に留まる方がより危険だった。

もしかしたらすぐに土石流が発生し、彼らが生き埋めになる可能性もあった。

車内で、鈴木音夢は外の状況を見ながら、思わず手のひらに冷や汗をかいていた。

井上菜々も怖がって、鈴木音夢の側にぴったりと寄り添った。「鈴木社長、私たち...大丈夫でしょうか?」

「大丈夫よ、絶対に山を下りられるわ。」

鈴木音夢は口ではそう言ったものの、同じように心配していた。

卓田越彦と杏子はまだ家で自分の帰りを待っている。この幸せな日々はまだ始まったばかりで、彼らと離れたくなかった。

鈴木音夢の車のすぐ後ろには、リンダとそのマネージャーの車が続いていた。

夏目夏菜は外の状況を見ながら、眉間にしわを寄せていた。

一方リンダは、顔に緊張の色を全く見せず、静かに窓の外の激しい雨風を眺めていた。

雨はますます激しくなり、さらに強くなる様子だった。

山道では、黄色い泥を含んだ水の流れがどんどん大きくなり、道路全体が川のようになっていた。

誰も予想していなかったが、山に入った後、突然の豪雨に見舞われた。

しかも夜だったため視界が悪く、車のスピードを上げることができず、ゆっくりと山を下るしかなかった。

しかし、車は30分走っても、ほんのわずかしか進んでいなかった。

この豪雨がまだ止まないなら、何が起こるか本当に分からなかった。

卓田家では、卓田越彦が外の雨の様子を見ながら、鈴木音夢と竜川たちの携帯電話が全く繋がらないことに、

まるで熱い鍋の上の蟻のように、落ち着かない様子だった。

だめだ、もう待てない。

卓田越彦は大股で部屋を出た。卓田正修は彼の様子を見て、音夢を心配していることを理解した。