チビちゃんはお母さんの眉間が寄っているのを見て、「ママ、これ全然痛くないよ。それに、私はとても綺麗だと思うの。他のお友達は持ってないし」と言いました。
鈴木音夢は彼女の頭を軽く撫でました。チビちゃんは普段はやんちゃに見えますが、実は思いやりがあり、心の中ではよく分かっているのです。
「いいわよ、ママが上に連れて行って少し寝かせるわ。子供が寝ないと、背が伸びないわよ」
林柳美はうなずきました。「あなたのお母さんの言う通りよ。音夢、彼女を上に連れて行ってあげて」
杏子に何か特別なことがあるのかどうか、おそらく明日、光恵大師が来てみれば分かるでしょう。
この光恵大師は百仏寺の住職で、以前、老当主が生きていた時に光恵大師と交流があり、卓田家もかなりの寄付をしていました。
それで大師自ら家に来て、杏子に何か問題がないか見てもらえることになったのです。
部屋に戻ると、鈴木音夢は彼女の顔を洗い、一緒に寝ようとしました。
ベッドに横になると、鈴木音夢は思わず彼女の首にかかっている玉の飾りを手に取り、じっくりと見つめました。
この玉の飾りは大師によって開光されたもので、あの「もの」を抑え、杏子が見えないようにするといわれています。
眠りについてから約1時間後、鈴木音夢は起きました。
彼女は軽く咳をしましたが、あまり力を入れる勇気はありませんでした。今はもうずっと良くなっていると感じています。
以前は本当に呼吸するだけでも痛く、咳をすることなど言うまでもありませんでした。
何度か、少し激しく咳をしたときには、血を吐いてしまい、卓田越彦を半死半生に驚かせたこともありました。
これからは、家族全員が無事平安であることだけを願っています。
夕方、ちょうど食事の時間になると、林柳美は卓田礼奈が非常に綺麗に着飾り、出かける準備をしている様子を見ました。
「礼奈、どこに行くの?あと30分もすれば、お兄さんが帰ってきて、みんなで食事をするところよ」
卓田礼奈は近づいて、林柳美の腕を取りました。「ママ、私...私は鈴木世介と一緒に食事をしたいから、家では食べないわ」
言い終わると、彼女は急いで走り去りました。
林柳美は思わずため息をつきました。やはり娘は大きくなると留められないものです。