第428章 私を無視するな6

シーフードレストランで、卓田礼奈は白ワインを軽く握りしめていた。彼女はすでに二杯飲んでおり、少し酔いが回っていた。

「畑野潤矢、このワインはごく普通だわ。今度うちに来たら、もっといいのを二杯ご馳走するわ」

畑野潤矢はその言葉を聞いて、すぐに頷いた。「礼奈、じゃあ明日行ってもいい？君が言ったんだから、忘れないでくれよ」

卓田礼奈は口元を少し上げた。「畑野潤矢、私が逃げると思ってるの？安心して、うちにはいいお酒がたくさんあるわ。卓田礼奈は約束を守る人間よ。あげると言ったらあげるわ」

それに、以前彼が彼女の家に遊びに来た時、彼女が彼に惜しんだものなんてあっただろうか？

畑野潤矢は二重の意味を込めて言った。「君が逃げるのが怖いんだ」

油断すれば、他の誰かに追いかけられて逃げてしまうかもしれない。

畑野潤矢は後悔さえしていた。もし彼が海外に行かなければ、卓田礼奈は今頃彼の彼女になっていたのではないだろうか？

彼らは一緒に育ったのだ。もし二人が付き合えば、両家の親はきっと喜ぶだろう。

卓田礼奈がもう一杯注ごうとすると、畑野潤矢は彼女がこれ以上飲むと酔ってしまうのを恐れ、ボトルを握った。

「もういいよ、もう飲まないで。食事も済んだし、家まで送ろうか？」

「家には帰りたくないわ！私、全然酔ってないもの」

彼女は家に帰りたくなかった。自分がなんて馬鹿なんだろうと思い、しばらく一人でいたかった。

畑野潤矢は仕方なく、もう一杯彼女に注いだ。「礼奈、これが最後の一杯だよ。もう飲ませないからね」

卓田礼奈はグラスを手に取った。「畑野潤矢、あなたって本当に口うるさいわね」

突然、卓田礼奈は思いついた。「今夜、バンジージャンプに行かない？」

畑野潤矢は彼女が確実に酔っているからこそ、そんな馬鹿げたことを言っているのだと思った。

それに、彼女は忘れているのではないか、彼は高所恐怖症なのだ。

「バカだな、お酒を飲んでバンジージャンプなんてダメだよ。これから家に送るよ。さもないと柳田おばさんに電話して、迎えに来てもらうぞ」

畑野潤矢がそう言うのを聞いて、卓田礼奈はすぐに萎縮した。

「わかったわ、帰ればいいのね。店員さん、お会計お願いします」

卓田次女が手を振ると、畑野潤矢が立ち上がった。「兄貴がおごると約束したんだ。じっとしてなさい」