卓田越彦は出張で数日間家を空けることになり、心配でならなかった。
しかし、今回のアメリカのプロジェクトは、彼自身が直接行かなければならない最終交渉の段階だった。
鈴木音夢は、重要な用事でなければ彼が出張しないことを知っていた。
今では会社の多くの業務を部下に任せていた。
「あなた、安心して出張に行ってきて。私は家にいるし、杏子も家にいるから、心配しないで」
卓田越彦は彼女の髪を撫でながら、「最短で3日で帰れるよ。何かあったら、俺がいない時は父さんに言うんだ」
「わかったわ」
本来なら、鈴木音夢は卓田越彦を空港まで見送るつもりだったが、彼に断られた。
卓田家から空港までは少し遠く、彼は彼女に往復させたくなかった。
出発前、卓田越彦は家の使用人たちに漢方薬を時間通りに煎じるよう指示していた。