卓田正修は眉をひそめ、時には互角の相手に出会えることも、なかなか難しいことだと思った。
「もう一局……」
豊田景明は横目で鈴木音夢を見て、自分のイメージを挽回しようと決めた。
鈴木音夢は二局の対局を見ていたが、どちらも豊田景明が辛勝していた。
卓田正修はとても悔しそうだったが、豊田景明は碁石を置きながら、「修一さん、焦らなくても大丈夫ですよ。今日はこれまでにして、次回また雪辱の機会を差し上げましょう」と言った。
卓田正修は時間を見て、仕方なく諦め、「今夜はうちに泊まって、明日続きをやらないか」と提案した。
豊田景明は食事にはあまり好き嫌いがなかったが、宿泊に関しては自分の家で寝るのが好きだった。
「修一さん、ご親切にありがとう。今夜のおもてなしに感謝します。今度河津市に来られたら、必ずお返しさせていただきますよ」