第550章 豊田家のお嬢様15

豊田景明は衝動を強く抑え込み、頷いた。「恵美、早く電話してくれ。」

陽川恵美は林柳美に電話をかけた。電話はすぐに繋がった。

「柳美、私は正門の前にいるんだけど、門番に止められたわ。これはどういうこと?」

林柳美は陽川恵美の言葉を聞いて、不思議に思った。「誰があなたたちを止めるなんて?そんなことあり得ないわ。」

陽川恵美は林柳美の口調から、彼女がまだ状況を知らないのだろうと察した。「門番が言うには、越彦が止めたって。柳美、今日の音夢の機嫌はどう?」

「越彦が言ったの?お昼ご飯の時は、二人とも良かったわよ。何も問題があるようには見えなかった。でも越彦は今日会社で会議があるはずだったのに、どういうわけか音夢と一緒に昼食を食べに帰ってきて、会社に戻らなかったわ。」

林柳美の話を聞いて、陽川恵美と豊田景明はだいたい理解した。

卓田越彦が彼らを門の外に止めたのは、明らかに音夢を悲しませたからで、今は彼らに会いたくないのだろう。

「わかったわ、柳美。私たちは外で待っているから、音夢がいつ私たちに会ってくれるか見てみるわ。」

林柳美はますます困惑した。「音夢がどうしてあなたたちに会いたくないの?何かあったの?」

「この件は長い話なの。音夢は景明の娘なの。後でゆっくり説明するわ。今は音夢に会いたいだけなの。」

「え?それって...どうして可能なの?あ、わかったわ、恵美さん。安心して、まず状況を確認してくるわ。焦らないで。」

電話を切ると、林柳美はすぐに部屋に入って卓田正修を探し、今知ったことを彼に伝えた。

卓田正修はやはり卓田越彦の父親だ。息子が豊田家の人々を外に止めるよう命じたということは、彼がすでにこの件を知っていたということだ。

「柳美、陽川恵美に電話して、彼らにいったん帰るように言いなさい。今は怒りの最中だから、何を言っても無駄だ。越彦の性格は知っているだろう?彼がどれだけ音夢を大切にしているか。彼女に少しでも辛い思いをさせたくないんだ。彼らの怒りが収まったら、この件についてゆっくり話し合おう。」

卓田正修も、音夢が豊田景明の娘だとは思っていなかった。

以前、将棋を指していた時、彼は少し不思議に思っていた。豊田景明が音夢の前で一生懸命アピールしようとしていたことを。