第551章 豊田家のお嬢様16

陽川恵美はすぐに豊田祐助に電話をかけ、スピーカーフォンにした。

河津市にいた豊田祐助は、陽川恵美の番号を見て電話に出た。「もしもし、お母さん…」

「祐助、河津市の件はだいたい片付いた?」

豊田祐助は少し驚いた。豊田景明の声を聞いて、「お父さん、ほぼ片付きました。井上家の人が細工したんです」

「祐助、片付いたら永崎城に来なさい。妹が見つかったんだ」

豊田祐助は「妹」という言葉を聞いて、ぎょっとした。

もし父が林おばさんの居場所が分かったと言うなら、それは驚くことではない。結局、豊田家はこれまで何年も彼女を探し続けてきたのだから。

しかし、今、父の口から「妹」という言葉が出てきて、豊田祐助は本当に衝撃を受けた。

思わず口走った。「お父さん、前は林おばさんだけが初恋の人だったじゃないですか?いつからもう一人恋人ができたんですか?」

「何を言っているんだ、林おばさんの子どもだよ。彼女は音夢だ。だから、早く永崎城に来なさい」

「お父さん、今何て言ったんですか?音夢が?音夢がどうして僕の妹なんですか?」

「とにかく、この件は話すと長くなる。早く来なさい」

「お父さん、分かりました。ちょっと指示を出して、すぐに永崎城に向かいます」

豊田祐助は電話を切り、眉をしかめた。

今、父がこう言うなら、ほぼ間違いなく確認済みなのだろう。

ただ、彼には音夢と父を結びつけることが想像できなかった。

つまり、彼女は父と林暁美の娘?

思いもよらなかった。何千里も探し回っても見つからなかったのに、音夢はずっと彼らのそばにいたのだ。

それは、これからは音夢が本当に彼の妹になるということだ。

豊田祐助は密かに息を呑んだ。もし卓田越彦がいなければ、もし彼らがもっと早く再会していれば。

おそらく音夢は彼の妹にならず、父は喜んで音夢を彼に嫁がせただろう。

まあいい、これが自分の運命なのかもしれない。音夢は今生、彼の妹でしかあり得ないのだ。

兄として、彼にはより一層彼女を黙って守る理由ができた。

まだ事情がどうなっているのか分からないが、父が電話をかけてきて永崎城に来るよう言ったということは、この件にはまだ問題があるということだ。

1時間ほど後、豊田祐助は部下たちに指示を出し終え、ヘリコプターで直接永崎城に飛んだ。