突然、彼女の肩に重みがかかった。
振り向くと、福井斗真が彼女の肩に上着を掛けていた。
二人は目を合わせて微笑み合った。村の空気は非常に新鮮で、二人は村の小道を歩きながら、多くの家の煙突から煙が立ち上り、夕食の準備が始まっているのを見た。
道で出会った村人たちは、すでに知らせを受けていたようで、彼らを見ても怖がることなく、むしろ熱心に食事に招待してくれた。
安藤凪は二度ほど断ったが、結局は彼らの熱意に負けて家に入った。農家はほとんど自給自足で、朝食はお粥と蒸しパンと漬物だった。彼らは少し恥ずかしそうにしていたが、安藤凪にとってはとても美味しい食事だった。
食事の後、安藤凪は布団と生活用品を買いたいと言い出した。村人の案内で、村で唯一の雑貨店に行った。店の品揃えは多くなかったが、彼らが必要とするものはほとんどあった。ただ、布団のような各家庭にあるものは置いていなかった。
最終的に村長が彼らに一組の布団を提供してくれることになった。村長の妻が息子のために新しく縫ったもので、まだ誰も使っていないという。安藤凪は布団に縫い付けられた赤い鴛鴦の模様を見て、口元を少し引きつらせた。彼女がお金を払おうとしても村長は受け取らなかったが、最終的に福井斗真が厳しい表情を見せると、村長はしぶしぶお金を受け取った。
二人は全ての準備を整えた後、実地調査を始めた。
昼食時、二人は村人の家に食事をもらいに行くのは気が引けたが、安藤凪は目の前の土かまどを見つめ、考え込んでしまった。彼女は火をつけることさえできず、最終的には顔中灰だらけになってしまった。安藤家には土かまどがなく、誰も彼女に火の起こし方を教えたことがなかったのだ。結局、薪を切って戻ってきた福井斗真が彼女を救った。
福井斗真は手慣れた様子で乾いた草に火をつけ、すぐに火が燃え上がった。彼が振り返ると、安藤凪が尊敬の眼差しで彼を見つめていて、彼は心の中で苦笑しながらも微笑んだ。彼は片手で安藤凪の目元の灰を拭き取った。
「見てみろよ、もし俺がもう少し遅く戻ってきたら、家に火をつけてしまうところだったな。これからはおとなしく俺を待っていてくれ」