まず、目に入ってきたのは古びた小さな村だった。電気の供給が不十分なため、ほとんどの人は日が暮れるとすぐに眠りについており、わずかな家だけが薄暗い灯りを灯していた。
福井斗真は携帯電話を取り出し、画面に表示された圏外のマークを見て、恐ろしいほど表情を曇らせた。
安藤凪は平然と扉を押し開いて中に入った。年月によって腐食した木の扉は、開くときに不快なきしみ音を立てた。安藤凪は携帯のライトを使って、部屋の中の電気のスイッチを探した。
スイッチを入れると、部屋はすでに誰かが掃除をしたことが明らかだった。これで彼女はほっと一息ついた。さもなければ今夜どこで寝るかが問題だったからだ。この部屋はとても小さく、1.5×2メートルの木製ベッドが一つあるだけだった。ベッドの横には木製のテーブルと3つの椅子があり、そのうちの1つは脚が一本壊れていた。
安藤凪はスーツケースを開け、用意してきた敷布団と掛け布団を取り出し、手慣れた様子でシーツとカバーをかけると、突然この家が少し温かみを感じるようになった。そのとき、もともと薄暗くちらつく頭上の電灯が一度点滅し、そのまま消えてしまった。突然の暗闇に彼女の心臓が強く鼓動し、無意識のうちに隣にいた福井斗真をつかんだ。
福井斗真は片手で安藤凪の腕を抱き寄せた。
安心させるように彼女の背中をポンポンと叩いた。安藤凪が暗闇に慣れてくると、福井斗真の腕から離れた。
彼女は電球が切れたのだと思い、ブレーカーを引いて電球を外そうとしたが、ドアを開けると、そこには背中を丸め、片手を背後に回し、もう片方の手には今にも消えそうな石油ランプを持った老人が立っていた。彼女は思わず叫び声を上げそうになり、顔色が青ざめた。
福井斗真は身を横に動かして安藤凪の前に立ち、警戒心を持って目の前の老人を見つめた。老人は優しく微笑み、方言の混じった標準語で、たどたどしく彼らと会話を始めた。二人はようやく、この老人がこの村の村長であり、この村では電気が制限されていて、先ほどの電球の点滅は電球の故障ではなく、制限された電力量に達して自動的に電源が切れたのだと知った。村長はそう説明すると、親切に福井斗真と安藤凪に石油ランプを手渡した。
安藤凪は村長の継ぎだらけの服を見て胸が痛んだ。