第79章 捕まえたぞ

安藤凪が再び福井斗真を見たとき、彼女は心の壁を少し下げていた。

「あなたの言うことにも一理あるわ。でも、私はまだ少し時間が必要よ」

「ゆっくり考えていいよ。僕の邪魔にはならないから」

福井斗真は一見引き下がったように見えたが、実際には相変わらず自分の思い通りに行動していた。

安藤凪は、福井斗真が一度決心したことを変えるのは難しいことを知っていたので、それ以上何も言わなかった。

その夜、高橋鐘一は申し訳なさそうな顔で安藤凪を見た。

「奥様、この数日間は社長の代わりに仕事上の問題を処理しなければならないので、病院で社長の付き添いをお願いできますでしょうか」

安藤凪は深く考えずに快く承諾した。

結局、福井斗真は彼女を救うために怪我をしたのだから、彼女が付き添うのは当然のことだった。しかし高橋鐘一が去った後、振り返ると福井斗真の口元にまだ隠しきれていない笑みを見て、何か違和感を覚えた。