しかし結局、今日自分が火の海から生きて出てこられたのは、福井斗真が飛び込んで自分を救い出してくれたおかげだった。彼女は深く息を吸い込み、複雑な思いで目の前の強がりな男を見つめ、彼の隣に座って真剣に感謝の言葉を述べた。
「福井斗真、今回はありがとう...あなたがいなかったら、私は本当に命がなかったかもしれない」
「口だけの感謝かい?」
福井斗真はソファにだらりと寄りかかったが、背中の傷からの痛みに思わず眉をひそめた。安藤凪の前では、異変を悟られないよう、その違和感を必死に抑え込んでいた。
「え?」安藤凪は彼の意図を理解できなかった。
「ただ口で感謝するだけ?誠意が全然感じられないな」
「じゃあ、どうすればいいの?」
安藤凪は無意識に尋ねた。すると福井斗真が指を一本伸ばして自分の唇を指さしたのを見た。その意図は明らかだった。彼女は顔を赤らめ、全身に熱が広がり、親切な看護師が見つけてくれた服を両手で無意識に握りしめた。「これは...やっぱり言葉で感謝するだけにしておきます」
福井斗真はそれを聞いて軽く鼻で笑った。
「ありがとうの一言で済ませるつもりか。急に背中が痛くなってきたよ。ああ、まさか命知らずで火の海に飛び込んで、恩知らずを救い出すことになるとは。あの梁が落ちてきた時、俺はある人をしっかり守ったんだけどな...」
彼の言葉が終わる前に、安藤凪は身を乗り出し、キスで彼の唇を塞いだ。彼女は福井斗真がこれ以上奇妙なことを言い出すのを恐れ、思い切って彼の望み通りにした。
福井斗真の瞳孔が一瞬大きく開いた後、体の力が抜けた。安藤凪が離れようとした時、彼は片手で彼女の後頭部を押さえ、キスを深めた。
安藤凪は目を見開き、両手で福井斗真の胸を押したが、彼の傷を引っ張ることを恐れ、もがくこともできず、ただ耐えるしかなかった。やがて彼女は徐々に意識を失い、無意識に両手で福井斗真の首に腕を回した...
どれくらい時間が経ったのか、ようやく福井斗真は満足して安藤凪を放した。
安藤凪は彼の腕の中で急いで息を整えた。
福井斗真は低く笑い、胸が震えた。
「君の肺活量はもっと鍛える必要があるね」
安藤凪は顔を上げて福井斗真を睨みつけたが、その春の光を含んだ瞳は威圧感どころか、彼の心を柔らかくし、腕の中の女性をもっと意地悪くしたいという気持ちにさせた。