「大丈夫だ、心配するな」福井斗真は背中の痛みに耐えながら、全身の力を振り絞ってこの言葉を絞り出し、よろめきながら階下へ駆け出した。幸いにも、最終的に二人は無事に脱出することができた。
脱出した直後、救助隊がちょうど上がろうとしていた。
「なんてこった、誰か出てきた!」
「本当に人を救い出したんだ、すごいぞ!でも真っ黒こげで、ほとんど人間に見えないよ」
耳元でのざわめく議論の声に、福井斗真は目まいを感じた。
彼は周囲を見回し、叫んだ。「医者は?医者はどこだ?」
すでに待機していた医師が、高橋鐘一の先導で急いでやってきた。福井斗真は白衣を見ると、完全に安心したかのように力が抜け、みすぼらしい姿で地面に座り込んだ。
高橋鐘一は最初、医師に社長を診てもらおうと思った。
結局、奥様と社長の二人の様子を見れば、社長の方がより悲惨な状態であることは明らかだった。しかし、医師が近づくや否や、社長が先に奥様の検査をするよう指示するのを聞いて、高橋鐘一は眉をしかめたが、最終的には説得を諦めた。