第97章 投資

安藤凪はそれを聞いて、無力感を感じながら福井斗真を見つめた。高橋鐘一が傍らに立ち、この光景を見て、突然、社長が福井氏のような泥沼から抜け出したことは、必ずしも悪いことではないと感じた。彼は社長がこれほどリラックスした姿を見たことがなく、まるですべての重荷を下ろしたかのようだった。

……

高橋鐘一という助っ人を得て、福井斗真の計画は前倒しできるようになった。

彼はもちろん、一生安藤凪の影の男でいるつもりはなかった。

今、最初にすべきことは会社を設立することだった。彼は間もなく競売にかけられる東郊三号の土地に目をつけていた。この土地は場所が辺鄙だったが、かつては法外な価格で取引されていた。

それは、かつて誰かが東郊を大々的に開発すると言ったからだが、この計画はずっと保留されたままだった。さらに、東郊三号の土地の近くで江戸時代の貴族の墓が発掘されたことで、この土地の価値は急落し、今では誰も見向きもしない状態だった。

しかし福井斗真は知っていた。上層部は確かに東郊を大々的に開発する計画を持っており、この墓の出現により、東郊を観光地として位置づけ、すでに地下鉄の路線計画も始まっていた。この開発が実現するのは時間の問題だったが、残念ながらこの情報は誰もが知り得るものではなかった。

彼が福井氏を離れる前に、三号地の計画は否定されていた。

福井斗真は今、何も持っていないように見えたが、彼の人脈はまだしっかりと維持されており、ほとんどの人が彼に顔を立てる用意があった。結局、彼が福井氏を離れた後も、現状に甘んじて上を目指さないとは誰も思っていなかった。

福井斗真の能力があれば、十分な時間さえあれば、現在の福井氏と同等の高みに登り詰めるだろう。

福井斗真が競売の資格を得ることは非常に簡単だった。

しかし今、悩んでいるのは、スタートアップ資金だった。東郊三号の土地は今や格安だったが、それでも彼の手元にあるわずかな資金では競り落とせなかった。彼は今、1300万円を持っていたが、そのうち1000万円は高橋鐘一の結婚資金だった。

福井斗真は、以前自分が高橋鐘一に支払っていた給料が少なすぎたのではないかとさえ思った。彼が自分と何年も働いてきたのに、貯金がたったの1000万円しかないとは。