安藤凪は結局、高橋雅子の説得に負けて行くことにした。
彼女は冷蔵庫の前に歩み寄り、ドアを開けると、その場に立ち尽くした。冷蔵庫の中に冷水などあるはずもなく、両開きの冷蔵庫には様々な花が詰め込まれ、中央にはアイスクリームケーキが置かれていた。そのケーキの上には小さな箱が乗せられていた。
「凪ちゃん、お誕生日おめでとう」高橋雅子は安藤凪に続いて下りてきた。彼女は両腕を胸の前で組み、ドア枠に寄りかかりながら、にこやかに彼女を見つめていた。
安藤凪は心から感動した。
彼女は振り返り、目尻を赤くしながら高橋雅子を見つめ、声を震わせて言った。「雅子、ありがとう。私の誕生日を覚えていてくれたなんて思わなかった」
この世界には、自分のことを覚えていて、気にかけてくれる人がまだまだいるのだ。