第174章 動悸

安藤凪が高橋鐘一を連れてドアを開けて入ってきたとき、会議室にいた人々は一斉に静かになり、皆が驚いた様子で安藤凪を見つめた。いつも株主総会を欠席していた彼女が姿を現すとは思っていなかったようだ。

安藤凪は周囲を見回し、堂々とした態度で言った。

「遅れてしまいましたか?」

「いいえ、安藤社長、ちょうど良いタイミングです。会議はまだ始まっていません」

その場にいる人々は皆、抜け目のない人たちだった。彼らは顔を見合わせた後、表面上は偽りの追従を浮かべていた。

安藤凪は真っ直ぐに主席に座った。安藤国彦の死去により、会議には一人欠席者がいた。彼女はその空席をちらりと見てから視線を戻した。

数人は安藤凪の表情を見て、それぞれ異なる反応を示した。

恒例の株主総会は、この期間に会社で起きた重要な出来事や、自分たちが成立させた重要なプロジェクトについてまとめるためのものだった。安藤凪は静かにこれらの人々の話を聞いていた。

これらはすべて福井斗真が彼女の代わりに処理していたものだが、彼女は来る前に簡単な理解をしており、彼女が理解していたことと大きな違いはなかった。会議が終わりに近づいたとき、突然年配の取締役の一人が、この会議とは全く関係のない事柄を持ち出した。

「安藤社長が亡くなった後、彼の持っていた株式はすべて安藤羽音さんの手にあると聞いています。安藤羽音さんの手にもある程度の株式があるということは、彼女も会社の重要な意思決定に参加する権利があるということではないでしょうか。今後の会議には安藤羽音さんにも通知すべきではないでしょうか」

彼の言葉が終わるや否や、さっきまでざわついていた会議室は一瞬にして静まり返った。全員が反射的に安藤凪を見た。

安藤凪は眉をひそめた。彼女は突然安藤羽音について言及したこの取締役をじっと見つめ、心の中で何か違和感を覚えた。これらの老狐たちは常に利益を最優先にし、彼らの利益に関係のないことには目もくれないはずだ。しかし今、突然誰かが安藤羽音について言及したことは、深い意味を持っているように思えた。

彼女は、自分が知らない何かがここにあると感じていた。

「田中社長、あなたは安藤羽音とかなり親しいのですか?」

安藤凪は微笑みながら先ほど発言した田中社長を見た。