第175章 権力争い

安藤凪と高橋鐘一の二人が病院に着いた時、福井斗真はまだ救急処置室から出てきていなかった。救急処置室の前には多くの人が立っており、みな福井氏の株主たちだった。

安藤凪は救急処置中を示す赤いランプを見て、胸がざわめいた。

彼女は知っていた。駆けつけてきた株主たちの多くは福井斗真の状態を見定めるためにいるのであって、彼らは福井斗真を心配しているのではなく、自分たちの利益だけを気にしているのだと。

彼女は自分を落ち着かせようと努めた。

「事故はいったいどうなったの?」

安藤凪は目尻を赤くしながら、自分に一番近い株主に尋ねた。

彼女の片側に垂れた、わずかに震える手が、今の彼女の心の動揺を物語っていた。

株主たちは顔を見合わせ、首を振った。

「詳しい状況はまだよくわかりません。ただ福井社長が田中家と契約を結んだ後、帰る途中で事故に遭ったということだけです。事故なのか、それとも...まあ、警察はすでに現場検証をしています。」