第214章 喧嘩

安藤凪が赤ちゃんを抱いてからまだ1分も経たないうちに、福井斗真は黒糖湯を持って出てきた。その光景を見ると、彼は黒糖湯を脇に置き、急いで赤ちゃんを彼女の腕から受け取った。

「凪ちゃん、赤ちゃんの世話は僕に任せて。この数日はゆっくり休んで、この黒糖湯を飲んでベッドで寝るんだ。資料を読んだけど、この時期は無理をしちゃいけないんだよ」福井斗真は今では赤ちゃんをあやすのが上手くなっていた。

安藤凪は苦笑いを浮かべた。昨日はお腹が痛かったが、今日はずっと楽になっていた。それに彼女は陶器の人形ではなく、これもできない、あれもできないというわけではなかった。

「斗真、もう大分良くなったわ。それに毎日ベッドで何もしないでいると、体が錆びついてしまいそう。私にもできる範囲のことをさせて。赤ちゃんをあやさせてよ」

安藤凪は真っ直ぐに福井斗真を見つめた。

福井斗真は腕の中の小さな赤ちゃんを軽く揺らしながら、結局は安藤凪に赤ちゃんの世話で疲れてほしくなかった。彼はしばらく考えた後、一歩下がった。

「じゃあ、近くで買い物でもしてきたら?散歩にもなるし。佐藤さんに付き添ってもらえばいい。どうせ高橋鐘一も最近忙しいんだから」

彼女がこんなに言ったのは買い物がしたいわけではなかった。

安藤凪は口を開きかけたが、言葉に詰まった。しかし福井斗真が一度言ったことは変えないと知っていたので、最終的には黙って「わかったわ。でも世話が大変だったら言ってね。一緒に見るから」

彼女は福井斗真の額の汗を見て心配そうに言った。

福井斗真は自分が完全に対応できると主張した。

……

3日目になると、安藤凪は体の不快感がすっかりなくなったと感じた。時々下腹部から暖かい液体が流れ出ることを除けば。それでも福井斗真は彼女に何もさせなかった。

安藤凪は退屈で別荘内をうろうろし、最終的にキッチンに行き着いた。何か美味しいものがないか探していたが、何も見つからなかったので冷蔵庫を開けた。そして冷凍庫の中にアイスクリームを見つけた。

安藤凪がアイスクリームを見た瞬間、目が輝いた。

彼女は妊娠中、アイスクリームを食べないように我慢していた。出産後も今までアイスクリームを食べていなかったので、計算すると約1年間アイスクリームを食べていなかった。その味をほとんど忘れかけていた。