第191章 承諾

最後の一筆を下ろす瞬間、安藤凪は顔を上げ、悲しみを堪えながら彼を見つめた。彼女のペンを握る指先は微かに震え、震える声には、かすかな期待が混じっていた。

「斗真、佐藤東の飴細工は好き?」

福井斗真は眉をひそめ、いらだった口調で言った。

「それがお前に何の関係がある?書類にサインしたら出て行け。俺の前で邪魔をするな。お前を見るとうんざりする」

「そう」安藤凪は自嘲気味に笑い、サイン済みの離婚協議書をテーブルの上に置き、福井斗真を深く見つめてから、背を向けて部屋を出た。

安藤凪は全身の力を振り絞って、泣き出さないように自分を抑えた。

彼女は病室を出て、壁に背中をもたせかけ、悲しみの感情が彼女を飲み込みそうになった。どれくらいの時間が経ったのか分からないが、彼女はよろめきながら病院の外へ向かって歩き始めた。しかし、数歩進んだだけで、足がふらつき、目の前が暗くなり、そのまま気を失ってしまった。