安藤凪は眉をひそめた。安藤羽音がどれほどの実力を持っているか、彼女は十分に知っていた。しかも、彼女がこのタイミングで会社に応募してきたのは、何か別の目的があるに違いない。そんなことはあり得ないと、彼女は絶対に信じないだろう。
彼女は高橋鐘一に軽く頷いた。
「わかりました。見てきます。彼女は今、面接中ですか?」
「はい」高橋鐘一は率先して安藤凪を安藤羽音が面接を受けている部署へ案内した。ドアの前で彼女は気づいた。安藤羽音が面接を受けているのは、自分がかつて所属していた広報部門だった。彼女にそんな能力があるとは。
安藤凪は少し考えてから、ドアを押して中に入った。安藤羽音の面接官は伊藤茜だった。彼女は業務能力が高く、二つの会社が合併した後も、伊藤茜は広報部のマネージャーの地位を維持していた。ただし、福井グループの広報部マネージャーであり、以前の安藤家の広報部マネージャーは現在、副マネージャーになっていた。