安藤凪は自分の前にある茶碗を見つめ、どこから手をつけていいのか分からなかった。福井斗真と安藤玄が自分の茶碗にすべての料理を入れようとしている様子を見て、彼女は急いで手を伸ばして止めた。安藤凪は自分の体で茶碗を守りながら言った。「もういいわ、これ以上は食べられないから。あなたたち二人も食べて、私だけにおかずを取らないで」
安藤玄と福井斗真の手が一瞬止まり、二人の目が合うと、その視線は空中で激しい火花を散らした。福井斗真の目は安藤凪の茶碗の中の緑色のものに落ち、箸を伸ばして安藤凪の茶碗から油麦菜を取り出し、脇に置いた。
「凪ちゃん、誰が油麦菜を取ってあげたの?君は油麦菜が一番嫌いだったよね」
福井斗真は皮肉っぽく言い終わると、安藤玄をちらりと見た。
安藤玄は歯ぎしりするほど腹が立った。自分は姉のことをよく知らないから、姉が油麦菜を嫌いだなんて知るはずがない!それに福井斗真はここで何を演じているんだ?このテーブルには彼ら以外に誰かいるのか?誰が取ったって、もちろん自分だろう。