第260章 小甥っ子

福井斗真の腕の中が突然空になり、顔を上げると安藤玄が警戒心いっぱいの表情で自分を見ていた。彼は心の中で何とも言えない不快感を覚え、冷たい目で安藤玄を見つめた。安藤玄は少しも怖がらず、振り返って真っ赤な顔をした姉を見て、福井斗真を一瞥した後、話題を変えて姉と福井斗真を引き離そうとした。

「姉さん、甥っ子を見せてくれるって言ってたじゃない。甥っ子はどこ?会いたいな」

安藤凪はすぐに我に返り、福井斗真に微笑みかけた。「弟を連れて赤ちゃんを見に行くわ」

そして安藤凪は安藤玄を連れて階段を上がり、福井斗真一人をリビングに残した。彼のあんなに大きな妻が他の人についていってしまったのだ。福井斗真は歯ぎしりしながら、後を追って上がっていった。

安藤玄は本来、姉を福井斗真の魔の手から救い出す口実を探していたのだが、ベビーベッドの中で、ぶどうのような大きな目で自分を見つめる小さな赤ちゃんを見た途端、心が溶けそうになった。思わず手を伸ばして赤ちゃんに触れようとしたが、姉が嫌がるかもしれないと恐れ、赤ちゃんの前で手を2秒ほど止めた後、最終的に引っ込めた。