記者たちに再び正面玄関で会って小林桂子の気分を害さないようにするため、安藤凪たちは小林桂子を連れて裏口から出発した。別荘に戻ったばかりのとき、饅頭の世話をしている乳母が心配そうな顔で近づいてきた。
「奥様、赤ちゃんがずっと泣き止まないんです。どうあやしても駄目で…」
安藤凪は饅頭が泣き止まないと聞いて表情を変え、他のことは気にせずすぐに饅頭の部屋へ向かった。小さな子は長時間泣いたせいで喉を痛めてしまい、元々はっきりとした声が今では子猫のように弱々しくなっていて、見ていて心が痛んだ。
彼女は急いで近づき饅頭を抱き上げたが、どうあやしても饅頭は泣き続け、彼女は焦りを隠せなかった。そばにいた福井斗真は眉をひそめて「家庭医を呼ぶように言っておく」と言った。
そのとき、小林桂子が近づいてきた。「安藤さん、私に試させてもらえますか」