第378章 ニュースを見なかったのか

金田茂は太っているように見えるが、動きは遅くなかった。安藤凪は胸がドキッとした。警備員が間に合わないと思った瞬間、突然スタンガンが金田茂の腹部に突き刺さり、彼は痙攣して地面に倒れ込んだ。

「安藤社長、大丈夫ですか」警備員は緊張した様子で尋ねた。もし安藤凪が彼の目の前で何かあれば、彼はもう仕事を続けられなくなる。福井グループの給料待遇はとても良く、彼はそこを離れたくなかった。

安藤凪はまだ少し動揺していた。

彼女の顔色は少し青ざめていたが、すぐに我に返った。彼女は警備員に軽く頭を振って言った。「今回は本当にあなたのおかげよ。感謝の気持ちとして、あなたの給料を倍にします。それに個人的に、一億円をあなたに差し上げるわ」

「安藤社長、これは私の当然の務めです」警備員は心の中の喜びを抑えながら、安藤凪に忠誠を示した。一億円あれば、どれだけ苦労せずに済むことか!彼はそう考えながら、安藤凪の前に立ち、スタンガンを持って金田茂に向けた。

「我々の福井グループの敷地内で、副社長に手を出すとは、我々を甘く見たな」

警備員の頭の中には今、安藤社長にこのお金を払う価値があると思わせることだけだった。安藤凪は横で思わず微笑んだが、緊張した気持ちは確かに和らいでいた。

そのとき、安藤凪は杉の香りのする腕に引き寄せられた。彼女が顔を上げると、福井斗真の角張ったあごが見えた。彼の薄い唇は一直線に引き締められ、地面で苦しんでいる金田茂を冷たく見つめていた。

安藤凪はこの角度から、彼の首筋に浮き出た青筋をはっきりと見ることができた。

「斗真、私は大丈夫よ」安藤凪は軽く福井斗真の手の甲を叩いて、なだめるように言った。「警備員が間に合ってくれたおかげよ」

福井斗真の冷たい視線が金田茂から警備員に移った。警備員は思わず背筋を伸ばした。彼は緊張し、福井社長の怒りが自分に向けられたものではないとわかっていても、驚いた。

バカだな、福井社長が有名な妻溺愛マニアだということを誰が知らないというのか。安藤凪に手を出すとは、本当に命が惜しくないのだろう、と警備員は思いながら、地面に倒れている金田茂を一瞥した。

金田茂は今、明らかに状況を理解していなかった。

彼は福井斗真を見ると目を輝かせ、地面から這い上がり、被害者ぶり始めた。