第349章 姿を消した

安藤玄は上機嫌で宴会場に戻ってきた。

彼は高橋雅子の方向に歩いていき、トレイを持った給仕の横を通りがかった時、そのトレイからシャンパングラスを一杯取り、軽く揺らしながら雅子の前まで歩いていった。

安藤玄は雅子のテーブルに置かれた三つのデザートを見て、眉を上げた。雅子がまだ反応する前に、彼女の前の栗のケーキを素早く取って食べてしまった。雅子が気づいた時には、栗のケーキはすでに安藤玄の腹の中だった。

「うーん、あまり美味しくないね」得をしておきながら知らん顔をする安藤玄は、ナプキンで口元を拭きながら、真剣に雅子を見て言った。雅子は思わず安藤玄に白い目を向けた。「美味しくないなら食べなければいいのに。でも、機嫌がいいみたいだね。髙田社長から欲しいものを手に入れたの?」