第381章 逃げられない

安藤玄は頷いて、目を細めて言った。「権力は人の目を眩ませる。彼に手中の権力を手放させるのは、殺すよりも辛いことだろう」

「それなのに、あなたは彼をそのまま帰したの?しばらくしたら自分から話し合いに来るなんて、あなたを騙しているだけよ。それくらい分かるでしょう」高橋雅子は腕を組んで、眉を上げて尋ねた。

「もちろんさ。でも、彼にもう少し生き延びさせても構わない。私と伊藤取締役の賭けは、取締役会全員が証人だ。彼が履行したいと思おうが思うまいが関係ない。それに、この会社には私以上に彼に第一線から退いて権力を手放してほしいと思っている人がたくさんいるんだ」

安藤玄は気にせず肩をすくめた。「それに福井斗真もいる。万が一、伊藤取締役が約束を守らなかったら、彼に公正さを求めることもできる」