安藤凪は片手を前に出して軽く扇ぎながら、少し落ち着いてから中に入った。正面に入ると最初に大きな中庭があり、長年人の手入れがなかったため、もともとブドウの蔓が植えられていた土地は荒れ果てていた。
「玄くん、木に登って子供たちのためにナツメを取ってきて」
安藤凪は頭を上げてナツメの木に実った果実を見上げ、軽く玄くんの腕を叩いた。玄くんは幼い頃から田舎で育ったので、木登りは簡単なことだった。彼はうなずくと、両手で木の幹をしっかりと抱え、上へと登っていった。
彼の動きは猿のようで、あっという間に木の冠まで登った。彼は枝の分かれ目に座り、実がたくさんついた別の枝を軽く揺らすと、ナツメの実が雨のように地面一面にパラパラと落ちてきた。
「もういいよ!玄くん」安藤凪は安藤玄がまだ続けようとしているのを見て、両手を口の周りに当てて拡声器のようにし、彼の方向に大声で叫んだ。安藤玄はようやく止め、すぐに木から降りてきた。