第445章 拒絶

「安藤凪様、お電話を間違えたわけではありません。広瀬慧美さんがあなたに会いたいと言っています。彼女はあなたに伝えたいことがあるそうです」刑務所の警備員は広瀬慧美の言葉を繰り返した。

凪はそれを聞いて黙り込んだ。そのとき、オフィスにいた福井斗真が凪の様子の変化に気づき、自ら近づいて彼女の腕を取り、目で何があったのかと尋ねた。

凪は軽く首を振り、再び断った。

「申し訳ありませんが、彼女には会いたくありません」

広瀬慧美という名前は、凪の決して楽しくない過去の記憶を呼び起こした。彼女がそう言うと、相手も強要せずに電話を切った。

「誰からの電話だったの？」福井斗真は好奇心を持って尋ねた。

凪は正直に答えた。「広瀬慧美がいる刑務所の警備員からの電話です。広瀬慧美が私に会いたいようですが、私は彼女に会いたくありません」

そう言いながら、彼女は気持ちが重くなり、福井斗真の肩に寄りかかった。福井斗真は目を細め、片手を凪の頭の後ろに置き、低い声で言った。「大丈夫、会いたくないなら会わなくていい。どうせ彼女は今、外に出て会いに来ることもできないんだから」

凪は福井斗真の言うことにもっともだと思い、気分が一気に良くなった。「いや、安藤羽音に電話してみよう。彼女が実の母親に会いに行ったかどうか聞いてみたい。結局、彼女の実の母親は彼女のせいで刑務所に入ったんだから」

彼女は思いつくままに行動し、すぐに体を起こして安藤羽音に電話をかけた。電話は長く鳴り続けた後、ようやく誰かが出た。まるで凪が電話をかけてくるとは信じられないかのようだった。

「凪？なぜ私に電話をかけてきたの？」安藤羽音の声には驚きと警戒心が満ちていた。

「ただ聞きたかっただけよ、最近お母さんに会いに行ったかどうか。結局、あなたのお母さんはあなたのために刑務所に入ったんだから。もう一年以上経っているわね」

凪の口調は穏やかで、まるで本当に何気なく尋ねているかのようだった。

しかし、凪のその言葉が安藤羽音の敏感なポイントを突いたのか、彼女の声のトーンが急に高くなった。

「凪！何が『お母さんは私のために刑務所に入った』よ。全部あなたのせいじゃない。あなたがいなければ、お母さんは刑務所に入ることなんてなかったのよ。元凶のくせに、よく私に聞けるわね？」

凪は電話を耳から少し離した。