第459章 いらない

彼女の言葉が終わるや否や、周囲は一瞬にして静まり返り、安藤凪の顔から笑みが消えた。

高橋雅子も勇者を見るかのようにその女性を見つめていた。先ほど凪ちゃんの言っていた意味は明確だった。3号別荘は値下げを重ねても売れず、ましてや彼らの家なんて言うまでもない。

それなのに彼らは堂々と1500万円と言い放った。

「それでも私たちが得をしているとでも?」安藤凪は皮肉を込めて言った。隣の女性は安藤凪の言葉の意味を全く理解していないようだった。「私たちは隣人同士ですし、100万円も安くするのは難しくありませんよ。友達になるつもりで考えてください」

100万円で彼女と友達になりたいとでも?

「申し訳ありませんが、その価格は高すぎます。それに、私たちの家は不動産に困っていません。弟が欲しいなら、直接彼に一軒与えますから。あなたたちの物件がそんなに人気があるなら、早く売ってしまいなさい。さもないと、長引いて良い値段で売れなくなりますよ」

安藤凪は二人をきっぱりと断った。

二人はそれを聞いて焦り始めた。石川青は急いで言った。「安藤さん、本気で欲しいのであれば、価格は交渉の余地があります。こんな高い価格を提示したのは、私たちの家具が高価だからです。信じられないなら、見に来てください」

隣の田中くんも頷いていた。

安藤凪は本当に好奇心が湧いた。彼らの家具はどんなものなのか、厚かましくも元の価格を50%も引き上げるほどのものなのか。彼女は無意識に福井斗真と安藤玄の方を見た。

福井斗真は腕時計を見て言った。「まだ時間は早いから、見に行ってもいいだろう」

彼と安藤凪は非常に息が合っていて、安藤凪が言葉を発しなくても、ただ一目見るだけで彼女の考えを理解していた。

二人は喜んで頷き、一行は隣の家へ向かった。隣の別荘は小さな庭付きの3階建てで、採光はあまり良くなかった。安藤凪は周囲を見回し、中古であることを考慮して最終的に700万円と見積もった。

しかし別荘に入った瞬間、彼女は一歩後ずさりした。こんなに金色が好きな人を見たことがなかった。家全体の装飾が金ぴかで、金色の壁紙、金色のシャンデリア、家具まで金色で、床さえも金色だった。

この二人は本当に質素で飾り気がない。